肥前を旅する「秘窯の里大川内山散策」

秘窯の里、伊万里は大川内山


色絵梅牡丹文様沈香壺
山暖簾の展望テラスから北松浦半島の最高峰、国見山が見える。その東側には日本陶磁器発祥の地、有田がある。江戸時代この地域で焼かれた磁器が伊万里津(港)から各地に運ばれ、遠くヨーロッパには長崎出島経由で輸出され大変珍重されたという。
江戸時代初め頃、肥前有田に佐賀鍋島藩の御用窯が置かれ、後に伊万里 大川内山に移されて宮中や将軍家への献上品や大名諸家への贈答品として約二百年の間、藩直営として厳しい管理のもと高品質の陶磁器がつくり続けられた。
今回、その「秘窯の里・大川内山」を訪ねる。



「国見トンネル」
山暖簾前の坂道を下り、県道54号線を右方向へ・・・
小塚岳トンネルを抜け、潜木交差点から国道498号線へ左折。上り道を走ると2つ目のトンネル、国見トンネルが見えてくる。


「二里大橋交差点」と染付花瓶
国見トンネルを抜けると、佐賀県有田町の景色が眼下に広がり、下り坂が続く。しばらく走ると二里(にり)大橋交差点がある。
この交差点には伊万里焼の花瓶が設置してあり、ここが陶磁器の古里であることを感じさせている。この交差点を直進、国道202号線の伊万里市役所入口交差点を右折。緩やかな坂道を進み、次の立花台入口交差点から県道26号線を右へ向かう。


「立花台入口交差点」脇にある染錦花瓶
立花台入口交差点脇の大川内郵便局を左に見ながら大川内町平尾交差点から県道251号線へ右折、5分ほどで秘窯の里、大川内山が見える。


欄干に麒麟の焼物がある「大正橋」
道の途中、陶磁器の破片が貼られた「大正橋」があった。鍋島青磁との呼ばれる青翠色の光沢が美しい。親柱には銘が入った染付の陶板が付けられていて、欄干には青磁で出来た「天空を向く麒麟」が置かれている。前方を見ると険しい山々が「秘窯の里 大川内山」を囲んでいる。この特異な地形が天然の城壁となり焼き物づくりの秘法を守るのに適していたという。

・・車を進め少し先の駐車場へ入る。・・・


藩窯時代の関所が場所を変え復元されていて、奥には険しい山々が見える

「いにしえ」の陶工に思いを馳せながら・・・


駐車場から見える窯の煙突と奇岩
駐車場から昭和の時代、窯元の象徴であったレンガ造りの煙突が見える。手前の煙突は今は使われておらず深緑の蔦に覆われている。


権現川に架かる陶工橋
・・関所へ戻り、権現川に架かる陶工橋へ・・・

陶工橋を渡ると「めおとしの塔」がある。・・焼き上がり窯から出された陶磁器を「めおとし」という金属の道具で軽く叩き、音によって良品と不良品とに選別する。・・・叩くときにでる硬い磁器の澄んだ音色が再現されている。




めおとしの塔


唐臼が再現されている
川の流れは陶磁器製造には欠かせない大事な動力源であった。「めおとしの塔」の奥に水力を利用した大きな臼が動いている。硬い陶石を砕き陶土にしたという。絶え間なく流れ出る水音と土を打つ臼の音が静寂の中に響いている。・・・



・・川沿いの遊歩道を少し歩くと・・・


染付の藍色が鮮やかな「鍋島藩窯橋」



鍋島藩窯橋欄干の陶板に描かれた鳳凰と青海波の染付絵があった。近づくほど絵付けの優美さと繊細さが伝わり、現代の陶工の心意気が感じられる。


「陶祖橋」と「陶工無縁塔」
・・少し戻り権現川沿いを上る・・
川沿いの陶祖橋近くの高台に藩窯時代亡くなった陶工の供養塔と奥の方に高麗人のお墓が建てられている。先人を敬い毎年供養が行われているという。

窯元が軒を連ねる鍋島藩窯坂へ


焼物の里の歴史を感じさせる「トンバイ塀」
「旧関所跡」を通り、焼物の里の街並みをゆっくり楽しむ。
坂道の所々に「トンバイ塀」がある。解体された窯の耐火煉瓦が再利用され塀が築かれている。「トンバイ」の語源は遠く中国に由来するという。


30軒ほどの窯元が暖簾をだしている
藩窯坂にある店々には伊万里焼がところ狭しと並べてあり、香炉や置物、花瓶、普段使いの食器などの色合いや絵付けにそれぞれ個性が感じられる。


ここ鍋島藩御用窯でつくられた焼物を「鍋島」と呼び、その伝統を受け継いでいるのが伊万里焼と呼ばれている。

かつて江戸から明治にかけて、伊万里や有田で焼かれた品は伊万里の港から積み出され、“伊万里”は焼物の代名詞となり、その当時焼かれた上質の作品には「古伊万里」の名がつけられている。

・・・坂を上り「藩窯公園」の入口まで向う・・・


情緒ある石畳と街並みがつづく・・・

伊万里焼が並ぶ店々

現在も「鍋島」の伝統を受け継ぐ伊万里焼


藩窯公園の遊歩道に架かる「トンバイ橋」

密集して建つ窯元と神々しい山々
・・藩窯公園へ入る・・・

欄干が「トンバイ」で出来た橋を通り、小道を進むと急峻な山々や岩壁がより迫力が増して見える。
雨の日はこの山々に雲が覆い水墨画のような幽玄とした雰囲気にかわるという。


年に1度、2日間ほど焼成された後7日間かけて冷まされる「登り窯」

「天神橋付近」
天神橋付近の川沿いを少し下流へ歩くと再現された登り窯がある。毎年8月の終わり頃この窯に火が入る。窯元の人々が集まり、赤松を主燃料に陶磁器が焼かれる。





後方の「潮岩」に見守られながら帰路につく




落ち着いた自然景観のなかに、藩役宅跡、御細工場跡、登り窯跡などが、ほとんど江戸時代そのままに保存され、また現代の陶工が焼いた作品が秘窯の里の処々に置かれていて見るものを楽しませている。

荘厳な山々に囲まれ歴史に裏打ちされた伝統が息づいている「秘窯の里 大川内山」であった。

■平成23年12月掲載 取材、原稿/山暖簾スタッフ・石丸

沈香壺(じんこうつぼ)=中国で香木入れとして使用され、来客の折り、蓋を開けて香りでもてなした
染付(そめつけ)=白地に藍色で絵柄を描いた陶磁器 および色合い
染錦(そめにしき)=染付で焼かれた陶磁器に色絵具で彩色し再度焼成した陶磁器 および色合い
青磁(せいじ)=鉄を含んだ釉薬(うわぐすり)が青(緑)く発色されることで生みだされる焼物
麒麟(きりん)=中国の伝説上の動物
鳳凰(ほうおう)=中国神話の伝説の鳥/霊鳥
青海波(せいかいは)=中国・青海地方の民俗紋様/半円を重ね波のように反復させたもの
瓶子(へいし:へいじ)=壺の一種。口縁部が細くすぼまる比較的小型の器形のもの

伊万里鍋島焼協同組合(伊万里鍋島焼会館内) http://www.imari-ookawachiyama.com/